2018年4月13日
Ed Sheeran(エド・シーラン)のPerfectって曲を知ってますか?
夕方ホテルのプールで流れてていい曲だなと思いiPhoneのShazamに聞かせてすぐ調べました
甘いバラードでメチャいい曲です
Youtubeで「エドシーラン Perfect」で検索すると公式PVが出てくるんですけどこのPVも素敵でかなりいいので知らない人は一度見て聴いてみる価値ありです
で、話を午前中に戻します
この日僕はプノンペンの中で唯一のスラムと呼ばれるブッディンという場所に行こうと思い昼前に出かけました
ブッディンというのはボロボロの廃墟があり、そこので夜な夜な薬物の売買や売春が行われてるという場所
夜に一人で行くのはあまりにも危険な為、昼間見に行くことにした
幸いブッディンのスラム街を抜けてさらに南へ進んだところに日本でおなじみのイオンモールがあるらしいのだ
ちょうど買いたい物もあったし、ブッディンを見たらそのままイオンモールまで行こう
独立記念碑のある綺麗な公園を通ってブッディンに向かって進んでいきます
ホテルからは20分ちょっと歩けば着けそう
そうして辿り着いたこの場所 あれ?廃墟は?
事前に調べてグーグルマップに立てたピンは確かにこの場所を指し示している
だけどそこにブッディン名物の見事な廃墟のビルはもうなくなっていた
写真で確認してたあの廃墟が丸ごと無くなっていた
本来この白い壁で囲まれてる向こうがブッディンの廃墟だったんだよなぁ
後から聞いた話じゃあまりの治安の悪さと見た目の悪さからカンボジア政府が動いたようです
去年の9月ごろから解体工事が始まったみたい
そうだな 時間は動いてるわけだし見たいものがいつまでもある訳ではないし、行きたいと思ってた場所にいつまでも行けるとは限らない
いつも色んな情勢が動き常に物事は変わって行く この世は生き物だ
ブッディンの廃墟を見れなかったのは残念だけどそのままイオンモールに向かった
イオンモールの中の家電屋でGoproのSDカードを買いたいのだ
なんだろ・・?このシュールな看板は 本当にランドリーショップなのかな
変な相撲取りの看板に気を取られてたけど向かいにもうイオンモールが見えてきた
ここがプノンペンのイオンモールか 海外でイオンモールとか初めてだ
と、ここで買い物を済ませる筈が、イオンモールの入り口で突然痩せた優しそうな年配のオジサンに声をかけられた
年は50代後半だろうか
今思えば買い物に来てるはずのイオンモールの入り口で中にも入らずこのオジサンが暑い中、外に突っ立って俺に突然声をかけて来た時点で何かしらの違和感を感じるべきだった
俺はここで快く受け答えをして話始めたことによりこの後とんでもない詐欺に巻き込まれることになる
先に言っておくとこれから俺が巻き込まれるのはこのブログのタイトルにある通り「トランプ詐欺」というものだ
やり方は微妙に違えど東南アジア全域にある詐欺のようだ
その手口と流れを実際にあった通りに書いて行こうと思う
(もちろん僕はまだこの時点ではこれが詐欺と気付かずに誘いに乗ってしまってる)
これを読んでくれて今後同じ被害に会う人が少しでも減ってくれれば幸いだ
目次
会話の中の質問でカモとして適任かどうかを見極められる
そのオジサンは「どこから来たのか?」「一人で旅行中なのか?」「どこに泊まってるのか?」などを聞いて来た
そして座って話さないか?っと僕をイオンモール内の一階にあるケンタッキーに連れて行きコーラーをおごってくれたのだ
オジサンは自分をカンボジア人ではなくマレーシア人だと言った(絶対嘘です)
今マレーシアからカンボジアに住んでる息子と娘に会いに来てるのだと言う
そして僕も自分が今世界一周の旅行をしてる事、日本での事などを話した
話しながら頭の中では「あぁ旅ってこういう出会いがあるからやっぱいいもんだなぁ」なんて思ってしまっていた
そして京都に住んでたことを告げるとそのオジサンは言った
「京都と言えば大阪の隣じゃないか、君は大阪にも詳しいの?」
僕は大阪に住んでたこともあるので「ある程度のことはわかりますよ」と答えた
するとオジサンは「私の嫁が今度日本の大阪に行くんだ 良かったら今からウチに来て嫁にゆっくり大阪のことを教えてやってくれないか?」と言ってきた
まだ買い物を済ましてなかったので一瞬迷ったけど、何となく親切にしてもらったので断りにくくて「遠くでなければ別にいいですよ」と伝えた
安心させる為の娘役が登場し、家に連れていかれる
オジサンは喜んで「今ちょうど娘と買い物に来てたんだ、娘も呼ぶからちょっと待ってね」と言い電話を始めた
この電話は今思えばカモを捕まえた合図の電話だったのだろう
しばらくすると娘と名乗る女性が現れ、愛想よく挨拶して来た
彼女の手にはイオンで買い物してたらしき買い物袋があったのでこの時点で特に変に思わなかった
「歓迎するからウチに来て 私は兄夫婦と住んでるの すぐ近くだから今から一緒にトゥクトゥクで行きましょ」と言ってきた
オジサンと娘の親子に連れられてイオンの前の道に出てトゥクトゥクに乗りに行くのだが、この時この親子はトゥクトゥクが沢山止まってる場所に向かわずに明らかに中途半端な位置に一台だけポツンと止まってるトゥクトゥクに乗り込んだ
ここでも本来俺は何かおかしいと感じなければならなかった
オジサンがドライバーに行き先を告げた
走行中も世界一周の予算はいくらなのか?どのくらい現金で持って来てるの?など聞かれ僕もホイホイ答えてしまっていた
今にして思えば初対面でお金のことなど結構突っ込んだことを聞いて、いや確認されてたんだな
10分ほど走っただろうか 「ここだよ」オジサンは細長い建物を指差し階段を上がり始めた
カジノのディーラーをやってたという息子を紹介され、イカサマの方法を伝授される
オジサンの息子の家に着くと、息子さん夫婦に歓迎され自己紹介が始まった
茶菓子を出してくれていい温かい雰囲気を作ってくれてる
ただ肝心のオジサンは「私は娘と奥でお祈りしてくるからゆっくり息子と話していて」と言って姿を消した
ここからこの詐欺のキーマンとなるこの息子役の男性とマンツーマンで少しの間話すことになる
※こう書いてはいるがもちろん僕はまだこの時点で自分が詐欺グループのアジトに連れて来られてるなんて微塵も気づいてない
オジサンの息子と名乗るその男はデカイ体をしてて今まで世界各地で合計20年カジノでディーラーとして働いてきたプロディーラーだという
カンボジア、シンガポール、オーストラリアなど色々な国のカジノで働いてきたそうだ
そしてプロ中のプロなので何でも知ってるという
「必ず勝てる方法もあるよ」と彼は言い始めた つまりイカサマである
彼が僕に教えるのはブラックジャックのイカサマ
誰も一度や二度はやったことがあるであろう自分の手札の合計を21に近づけるあのゲームだ
ここから彼は一通りブラックジャックのルール説明に入るのだがルール自体は僕も知ってる
「じゃあイカサマの方法を教えてあげよう」満を持して彼は言った
いよいよだ
有名なカードカウントかな?それとも俺たち素人が全く知り得ない方法なのだろうか
この時は少しワクワクしてたのを覚えている
そしてその方法とは・・・・・
ただカードを配る前に事前に俺に次のカードをチラっと見せるだけ
たったこれだけだったのだ
いや確かに相手にそれが全く気付かれなかったとしたら成立はするかもしれない
でも普通に考えて相手にもバレバレだと思うのだが
えっと、、20年プロとして各国のカジノを回ってたんだよね・・?
そのイカサマがそんな素人が今考えたようなものなのか?
何となくモヤモヤしながらもイカサマの説明を受けたところで「試しに少し練習してみよう」と言われた
そして言われるがままに一通り練習した頃に彼がテーブルに置いていた携帯が鳴った
タイミング良くカジノを取り仕切っていたという金持ちの男から連絡が来る
彼は携帯に出る前に携帯の液晶画面をこちらに向けて「ミスターリーから電話だ」と顔をしかめて言ってきた
何でわざわざ俺の知らない人からの電話の着信を見せるのかな?っとは思ったけどここでも俺はまだ鈍感だった
彼は何かしらそのミスターリーという男と電話で話し、最後にいかにもこちらに聞き取りやすいように「あぁ、わかった 20分後に来るんだね」と言って電話を切った
何でも彼がいうにはそのミスターリーという男はシンガポール人の金持ちで昔働いていたカジノを取り仕切っていた人物らしい
ただ金に汚くて自分だけが多くの利益を得てカジノの従業員にお金は少ししか払わなかったとんでもない奴だったと説明を受けた
「こんな奴許せない 君もそう思うだろ?」と同意を求められたので「うーーん、かもね」ぐらいで曖昧に答えておいた
イカサマの最終確認後にMr.リー登場
そうこうしてるうちにこの家にお邪魔してからもう1時間近く経っていた
あれ?
よく考えたらあのオジサンの奥さんに大阪の事を教えるために来たのにそれはどうなったんだ? あのオジサンはあれっきり一度も顔を出さないぞ?
そんな事を考え出した頃に彼が「奥の部屋に本物のカジノテーブルがあるんだ 見たくないか?」と言い出した
へぇーそんなものまであるのか プロだから家でも練習を欠かさなかったのかな?
僕はまだお人好しだった
奥の部屋に通されてカジノテーブルを見せてもらった
アレ?今までも俺もオランダなどでカジノには行ったことあるけどこんなにちゃっちかったっけ? そして俺が今まで見てたテーブルよりもあきらかにサイズが小さい
「さぁもう一度イカサマのやり方をおさらいしよう」
彼は僕にもう一度復習させた 何でこんなに何度もするんだろうと思い始めていた
そしてその後彼が言った言葉はこうだった
「今からこの家を訪れるミスターリーはさっき言ったようにとんでもない奴だ
だからこのイカサマでリーをちょっとお仕置きしてやろう」
俺が「え?」っと短く聞き直すと「だからこのイカサマでリーを騙して金を巻き上げて俺たち2人で山分けするんだよ 大丈夫!やり方は今何度も確認したしミスターリーはポーカーは強いけどブラックジャックは素人同然だ」と息巻いてる
ちょっと待て 今からイカサマで知らない人物から金を巻き上げるだと?
何で急にそんな犯罪の片棒担ぐような展開になるんだ?
そして俺がそれに返事するかしないかのうちに部屋のドアが開いた
そこにはさっきまで一向に顔出さなかったあの最初のオジサンがいた
オジサンは「ゲストが来てるよ」と白々しく言った
そこにリーと名乗るスーツを着て指に大きな金の指輪をはめた、いかにも金持ちそうな初老の男性が入って来た
タイミング良すぎだろ!
出入り口を見張られてる軟禁状態のアジトからの脱出
僕に考える隙を与えないようなタイミングで終盤物事が進み、ミスターリーが部屋に入って来てイカサマの登場人物と舞台が整ってしまった
もう有無も言わさずイカサマブラックジャックが始まってしまう気配だ
挙げ句の果てにさっきの娘役の女性まで部屋に入って来て「ブラックジャックのゲームをするの?私もここで見てていい?」なんて言いながらさり気なく扉を閉めてそこにもたれてこちらの脱出経路を塞いでいる
この時、僕は頭の中で今日のイオンモールで声をかけられたあの瞬間からここまでの出来事を早送りで思い返していた
今になって思い返せば何もかもが用意周到に準備されたシナリオだった
そして思えばおかしな点は沢山あったのだ
買い物もせずに猛暑の中イオンモールの前に立っていたオジサン
こちらの資金や仲間がいない事を確認するような質問の数々
最初から決めていたように辺鄙な場所に止まってる一台のトゥクトゥクに向かって乗った事
家に向かう道中、家までの道を覚えてしまわれないよう四六時中話しかけられた事
嫁さんに大阪の事を教えに来たはずがディーラーを名乗る息子との話がメインになってた事
突然会ったばかりの人にイカサマのやり方を教え始めた事
そのイカサマの方法が20年のプロディーラーにしては安易すぎるものだった事
リーという人物から個人的な電話がかかって来たのをワザワザ俺に説明し始めた事
リビングから奥の扉のついたカジノテーブルの部屋に移らされた事
リーという金持ち男の登場するタイミング
部屋の扉の前に立ちふさがってる娘役の女性
そう 全てが出来過ぎていたのだ
もう俺の中ではこの時「イカサマにかけられてるのは俺の方だ」と確信していた
ブラックジャックが始まってしまうともう終わるまで抜けれないような気がする
となれば始まる前に何としてもここから出ないと でも、どうやって?
俺がとっさに考えたのはスマホを使うしかないという事
外部とのやり取りをして帰らねばならない理由を作って強引にでもここを出るのだ
演技でもそれをするしかない
俺のスマホには手帳のようなオープン式のケースがついているので、ケースを開けていない限りスマホの画面は相手に直接見えない
ここで電話がかかってきたふりをしてスマホを手に取り耳に当てて話し出した
人が大勢いる場所では席を外して外で話すのが普通だ それを利用しよう
俺は「電話かかってきたから一旦部屋を出るよ」といって扉の前の娘役の女性を退かせて強引に部屋の外に出た
その時のあの一家の慌てぶりは普通ではなかった
「ヘイ、〇〇!(←俺の名前)戻ってくるんだ!」息子役が部屋の外まで追いかけて来た
あのオジサンもこんな時だけちゃっかり現れて部屋に戻るように促してくる
やましい事がなかったら電話一本でなんでこんなに慌てるんだ おかしいだろ
娘役の女性まで部屋から出てきて俺の腕を掴み「これだけ説明を受けてまさかここで帰らないわよね?」って笑って言ってくるが目は笑ってない
しかもリビングにはいつの間にかさっきまではいなかった知らない男女が増えている
何だこいつらは?玄関の見張り役か?
しかもそいつらまで本来なら事情も知らないはずなのに「まぁまぁ落ち着いて」みたいな感じで俺を部屋に戻そうとする
「いやいや、初対面でしょ?キミ誰?」って聞くと「親戚」と曖昧な答えが返ってくる
もう俺としてはせっかくあの部屋を出たのだからワザワザ戻る必要などないので、あとは玄関を突破するだけだ 行くぞ!
あ、カバンがあの部屋の中に置きっ放しだ、やってしまった(汗)
急いでカバンを取りに部屋に戻る
部屋の中で待ってたミスターリーから一言
「Welcomeback!」
戻って来たんじゃねーよ 一瞬で出てやるこんな部屋
が、またもや扉の前に娘役と息子役
「ゴメン、ホテルに戻らないといけなくなったからそこどいて」っともう息子役を手で押しのけて部屋を出る が、玄関にはあのオジサンと途中から増えた謎の親戚が立ちふさがっている
後ろの部屋から出て来た娘役と息子役が俺のカバンを掴んで部屋に戻そうとする
「前門の虎に後ろの狼」とはこの事だ
ここだけで20分ほど押し問答があっただろうか
俺には体感1時間ほどにも感じた
が、同時に彼らの焦りもかなり感じてたのでもう一歩のはずだと思った
後ろを向いて「カバンを離してくれるかな?」軽く笑いながら言ったけど多分俺の目ももう笑ってなかったと思う
娘役はすぐに手を離したが息子役のデカイ男はまだカバンを掴んでいる
「俺のカバンに触るなと言ったんだが?」
その一言で息子役は諦めたように「OK,OK」と言って笑いながら手を離した
そのまま玄関まで行き最初に俺に声をかけてきてこの詐欺へのキッカケを作ったオジサンの前に行って「俺は帰るよ」と目を見据えて言った
オジサンは俺の後ろに立ってる息子役の男と目を合わせて、その後諦めたように溜息をつきながら俺に「OK・・good bye」と呟くように言って扉を開いた
詐欺ファミリーを振り切り、扉を出て階段を降り家の真下の道路に出るとこんな何もない普通の住宅街なのにこの家の前にはトゥクトゥクが駐在していた
考えてみればこのこと自体がもうおかしいのだ
普通の家の前に常にトゥクトゥクが待ってるなんて
意味するところはひとつ
ここは頻繁に詐欺で連れてこられる人と金を取られた後に泣く泣く帰る人がいるって事だ
俺は別の道に出て別のトゥクトゥクを捕まえイオンモールに向かった
帰り道でそういえばここはどの辺なんだろう?と思いグーグルマップを確認した
どうやらあの詐欺ファミリーにイオンモールから少し南西の位置に連れてこられてたようだ
最初にイオンの入り口で声をかけられてからここまで合計で約2時間くらいだった
イオンで買い物を終えた俺は憔悴していた 精神的バトルを繰り広げたのだから無理もない
よくあそこで何もされずに軟禁ですんだもんだ もっと仲間が集まってきて身包み剥がされていてもおかしくなかった
脱出できて被害総額はゼロで戻ってきたというのに俺は落ち込んでいた
陽気に話しかけてきて親切にしてくれた人を信じた結果こうなった事に、騙されてた事に少なからずショックを受けて何か悲しくなっていたのだ
旅っていいものだと思う なるべくならば人は信用したい 現地の人との交流も大事にした
でもそこを付け狙ってくる一部の悪い連中がいるのも確か
結局は自分がどこまで信用しどこまで疑うのか自分で線を決め、時に直感を信じて用心して行くしかないのだ
疲れてホテルに戻るといつものメンバーが飲みながらプールで泳いでいた
オーストラリア人のキムさんが「どこに行ってたんだ?早く来いよ」とプールの中から手招きしてる
部屋に買い物袋とカバンを投げ入れてTシャツを脱いで短パンのままプールに飛び込んだ
※長くなったのでプノンペンのイオンモールについてはまた後日書くとする
コメント
トランプ詐欺はアジアでは珍しくない話ですが、被害なく無事に生還できただけでも良しとしましょう。
こうやって身をもって体感することで、少しずつ旅のスキルが成長していくものですよね。
harumame様、コメントありがとうございます!
これベトナムやタイでも有名な詐欺なんですよね
乱暴な連中ではなかったので強引に振りほどいて抜け出しましたが相手によっては危なかったかもしれません
旅スキル・・上がったのかな?