2018年9月14日
この日僕はイギリス人のロバートとタクシーをシェアしてヒヴァの町からトルクメニスタンのボーダーを目指していた
今日から僕は「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれるトルクメニスタンに入国する予定だ
そして無事入国できたらダルバザというトルクメニスタンの中央にある地域の砂漠の中のガスクレーター通称「地獄の門」を訪れるつもりだ
まずはウズベキスタン側の国境
国境の直前で残ったスムを闇両替を使ってトルクメニスタンのマナトに両替
もちろん出国審査なので2人ともあっさり通過
なぜかあれだけ用心して取っておいた宿のレギストラーツィアは全く確認されませんでした
※ウズベキスタンではいつどこの宿に宿泊してたかの記録になるレギストラーツィアという紙を旅中に残しておいて出国の際に見せれるようにしておく必要があります
問題は次だ トルクメニスタン側の国境へ
ウズベキスタン側の国境とトルクメニスタン側の国境の間は小さなバスが行き来してるのでそれに乗って移動します
トルクメニスタン側の国境が見えてきた
建物の中に入ると思った以上に人が多く荷物検査の場所などは列が出来ていた
僕はトランジットビザを持っていたので思ったよりスムーズに通過
トルクメニスタンのトランジットビザを取った時の記事はこちら
僕は見た目が明らかに外国人なので荷物検査も並ばずに優先してやってもらった
簡単な質問だけで特に荷物も開けられることはなかったです
受けた質問は以下の4つ
- 薬を持っているか?
- ドローンなど持ってないか?
- 酒は入ってないか?
- 武器になるような物は持ってないか?
全部ないので当然ノーを連発して通過
でも問題はロバートだ 実は彼は写真家で今回ドローンも持ってきている
しかも彼は今回トルクメニスタン内でガイドを雇っており、インビテーションを貰ってこの国境で観光ビザを取る手筈になっている
その手続きで少々手こずってるようだ
どのホテルに泊まるのかなどをしつこく確認されていた
なんとか観光ビザを取ってやっと僕が待っていた荷物検査のところに辿り着いて彼も同じ質問を受けた
ドローンのところでロバートはあっさりNoと言ってのけて荷物を開けられずに通過
もし荷物を確認されてたらアウトだった ドローンを没収の上で入国を許可されるか最悪の場合、さっき得たばかりの観光ビザを取り上げられて入国拒否されてたかもしれない
写真家って国によっては結構なリスク背負って越境してるんだな
彼が一緒に国境を越えてトルクメニスタンに入った写真家のロバート
世界中で高級ホテルで有名なフォーシーズンズのホテルの広告などを手掛けてる本物のプロの写真家だ
国境を越えたところで彼の雇ったガイドの車が待っていたので一緒に乗せてもらいタシャウスを越えてクフナウルゲンチという町まで無料で行ける事になった
辿り着いたクフナウルゲンチの食堂はどういう訳か表は普通の家で中が隠れレストランになっている
こういう形態じゃないと営業できないんだろうか、この国では・・
出して貰ったナンとスープはとても美味しかったです
そしてロバートもダルバザの砂漠のガスクレーターに行く予定だけど、さすがにずっとついて行くのは厚かましいので僕はこの町で降りて自分で車を探しダルバザに向かう事に
トルクメニスタン人の若者2人と僕の3人を乗せたシェアタクシーはダルバザ目指して南下し始めた
そうして午後6時過ぎに辿り着いたひとつのチャイハネ
チャイハネってのは日本でいう「道の駅」のような砂漠の中の休憩所
この中で簡単な食事も取れるし、荷物を預けたり泊まる事も出来る
地獄の門に行く旅行者は皆このチャイハネという場所に荷物を預けて砂漠に向かうのだ
ここですが地獄の門に行く為に荷物を預けれるチャイハネは2箇所あります
有名な方のチャイハネは地獄の門のガスクレーターから遠い方になります
また有名な方のチャイハネは経営者が金にがめついので評判も悪いです
もうひとつのガスクレーターに近い方のチャイハネを使った方がいいと思います
下のmaps.meの写真の位置関係を確認してください
青い矢印がこのガスクレーターに近い方のチャイハネ
その右側の黒い山のマークに赤いピンが立ってる場所が「地獄の門」と呼ばれるガスクレーターです
そして下の方に立ってる赤ピンがもともと有名だった方の評判悪いチャイハネ
ガスクレーターまでの距離は一目瞭然です
評判悪いチャイハネから地獄の門までは約8km
近い方のチャイハネは地獄の門まで約6kmです
距離にして約2km変わります
2kmといっても普通の道ではなく砂漠の砂の上を2kmです
時間と労力はそれなりのもんです
ワザワザ遠くて評判悪い方のチャイハネを使うメリットなどありません
車で移動中にmaps.meでよく位置を確認して右手にチャイハネらしき建物が見えてきたらドライバーにすぐ声をかけて止めてもらう必要があります(もしくは事前に細かく場所を伝えておくか)
チャイハネのほぼ外でやってるのと同じようなトイレで済ませておきます
なんせ今晩は砂漠で野宿です
荷物は下の写真の倉庫に明日の朝まで5ドルで預かってもらえます
ここが荷物を預ける倉庫 明日の朝またここに取りに戻って来ます
これが今晩砂漠に行く装備
念のために1,5リットルの水を3本 食料にスニッカーズともう一本チョコバー
カバンの中は寝袋とマットと長袖とパーカーを一枚ずつ
写真に写ってるコーラーはここで飲んでいきました
さぁいよいよここから何もない砂漠に向かって出発です
この時点で時刻は午後7時 ちょっとゆっくりしすぎたかな
maps.meをこまめに見ながら砂漠の中にあるガスクレーターを目指し歩き始めます
砂漠ならではの乾燥したパリパリの棘のある植物が生えてます
砂と一緒に靴の中に入ってきて結構痛い
ガスクレーターに到着するまで後にも先にも砂漠で人に出会ったのはこのオジサンだけ
砂漠の向こうからバイクに乗って颯爽と現れました
地面に手で5kmと描いてくれた ここからガスクレーターまであと5キロって事だ
途中地面が盛り上がった線路を越えていかないといけません
足元は砂なのでここを越える時は砂が崩れて結構滑ります
ここがガスクレーターに行くまででしんどい場所の一箇所目です
だいぶ日が傾いて来た
砂漠は一度日が傾き出すと周りに何も無いので暗くなるのが非常に早いです
この辺からもう少し早くチャイハネを出ればよかったと思い始めてました
あっという間に日は暮れて月が出て来た
そして本当にmaps.meなどGPSで現在地を確認してないと危ないです
砂漠は同じような景色が広がってるために小まめに自分が向かってる方向を確認しておかないといつの間にか違う方向に進んでいることが多々ありました
夜8時を過ぎたあたりから急激に暗くなり周りはあっという間に真っ暗に
この頃から足元の植物ももう見えなくなって何回も刺々しい植物を踏んで痛い思いをした
真っ暗で静かな砂漠を一人で歩いてる時の心細さは日本の生活で味わったことのないものでした 今日本当にたどり着けるのだろうか?一人ではなく同行者を募ってから来るべきだったんじゃ無いだろうか?っと一人でやってきた事を後悔し始めてました
そんな時砂漠の丘の向こうがうっすら赤く光ってる場所を発見した
maps.meで確認してみたら地獄の門の方向だ まだ地獄の門の姿形は見えないけど間違いなくあの丘の向こうにガスクレーターがあるはずだ
ここからは疲れを忘れて無我夢中で進んでたと思う
そして遂にガスクレーターが顔を見せた
どうやら僕は自分が望んでいた地獄に辿り着いたようだ
ここが「地獄の門」と呼ばれるトルクメニスタン唯一の見所
これを見るためにビシュケクでのトランジットビザ申請から始まり、タシケントでのビザ受け取り、今日の入国からの砂漠越え・・・本当に長かったな
ガスクレーターの一部には昔この上に建物があった時の名残を示す金属のパイプのようなものが見える
昔この上にガスを取る為の建物があったがそれが地盤ごと崩壊してこのクレーターが出来たらしい
つまりこれは自然に出来たものではなくて人間が作ってしまった負の遺産と言っても過言では無い代物だ
ガスクレーターの周りには安全面から柵が作られてました
ただ皆乗り越えて写真撮ってます(笑)
観光ビザを取って集団で来てる年配の欧米人のツアー客もいた
少し離れた場所にゲルやテントスペースがあるらしく高いお金でガイドを雇っている観光客はそういう所に泊まっているようだった
僕らトランジットビザで入国した貧乏バックパッカーは皆ガスクレーター周辺で野宿だ
ガスクレーターから少し距離を置いて今日の寝床を作る
マットを敷いて横になるとすごく寒くて静かだった
うっすらした月明かりで砂丘の山が照らし出されている
ただクレーターから離れると尋常じゃ無い寒さだったのでガスクレーターの真横に移動した
地獄の門の真横が今日の僕の家だ
ただガスクレーターの近くはサソリやヘビもいるらしいのでそれに用心しないと
僕は見なかったが後日ここに行った友人はサソリを目撃してる
そして更に厄介だったのは風が吹くと砂漠の砂が舞い上がり小さな砂嵐となって襲って来る事
上の写真でおわかりいただけるだろうか
夜中でも目で確認できるほどの砂嵐が発生して寝ていると顔の上に砂をバサーっとかけられる
正直行って寒さといい、サソリといい、砂嵐といい人がまともに寝る環境では無い
特に夜中の3時以降の冷え込みは普通ではなかった
砂漠は日中はこれでもかというほど暑く、夜はこれでもかというほど寒い
砂漠の寒暖差を正直なめていた
3時以降はガスクレーターで暖を取っていたがそれでもあまりの寒さに一睡も出来なかった
そして朝5時半を過ぎたあたりで東の空がオレンジ色になってきた
やってきたのは地獄の終焉を告げる朝日だ
空からの機械音に気づいて見上げて見るとドローンが飛んでいた
間違いなくロバートだ 彼は地獄の門に朝日が昇るところを撮影したいと言っていた
彼も無事辿り着いてここで同じように地獄の終焉を見ていたんだな
なんだか信じられない一夜だった
朝7時朝日は登りきり地獄の門の炎のショーは終わった
ここからは来た道を戻らなければ
歩き出すと朝日に照らされた砂漠はすぐに暑さを取り戻した
昨日真っ暗で見えなかったけどここを一人でずっと歩いて来たんだな
長くて過酷な一日だったけどこの砂漠での一夜は僕にとって忘れられない大事な思い出だ