2020年2月22日
前回の記事の続きから
僕はこの日予定より12時間近く遅れて合計60時間にも及ぶバス移動を終え、夜の21時過ぎにリオデジャネイロのバスターミナルに到着した
読んでない人はまずは前回の記事をお読みください
前回の記事はこちら
バスから自分の荷物を拾い上げるのを待ってる時だった
短パンの右のポケットに入っていたはずの財布が無い
それに気づいた瞬間背中に一気に汗が滲み出るのを感じた
ヤバイ バスの座席に落としたのか!?
大急ぎで空っぽになったバスの中に駆け戻る
自分の座席を見に行くが座席の上にもその周辺にも財布は落ちていない
僕が一人バスの中でオタオタしてるのを見た運転手が何かに気づいて僕に声をかけた
運転手は一番前の座席を指差している
え?
まさかそこにあるのか?
僕が急いで指をさされた一番前の座席を見に行くとそこには僕の財布があった
中身空っぽの状態で
いや、正確には僕がメキシコで作った国際学生証だけが財布の中に残っていた
そして中に入ってた18000円分のブラジルレアルと2000円分くらい残ってたコロンビアペソが無くなっていた
僕は南米を一周してまたコロンビア南部に戻ってくるつもりだったのでコロンビアペソを両替せずに残しておいたのだ
それも持って行かれてしまった
ただラッキーだったのは合計2万円以上入ってたとはいえこれがダミー財布だった事だ
実は僕はアフリカを周ってる前半でマダガスカルに行った時に今後のアフリカ縦断に備えてダミー財布を2つ買っておいたのだ
なぜ2つ買ったかというと最近は相手も旅行者が念の為にダミー財布を用意してる事を知ってるからだ
実際アフリカで強盗に会った時、ダミー財布を手渡す旅行者は多い
安いダミー財布を買ってそれに少額のお金を入れておいて、いざ強盗に襲われた時にそれを大人しく差し出すのだ
でも最近は相手もアジア人旅行者がこんなに少ししかお金を持ってない訳がないと分かってるのであまりにちゃちな財布だったり、中に入ってる金額が少ないと他にも持ってないかチェックしてくる強盗がいる
その時に「あぁ〜 ダミー財布という事がバレたか」という観念した表情をしてさらにもうひとつのダミー財布を手渡すのだ
だいたいはこの2つ目を渡せばシメシメと思い退散してくれる
その為にダミー財布を2つ買って本当の財布と合計3つの財布を持ちながら旅をしていた
アフリカ旅を無事に終え、ジブラルタル海峡を越えてヨーロッパに戻った時に今からアフリカに行く旅仲間と再会して2つのダミー財布のうちのひとつを用心の為にあげた
そしてひとつ残ったダミー財布は中南米を南下する時の為に取っておいたのだ
今回盗まれたのはまさにその手元に残して置いたもうひとつのダミー財布
だからクレジットカードなどの類は一切入れてなかった
これにはマジで救われた
僕が世界一周に持って出たクレジットカードはVISAとJCBの2枚
もしメインで使ってるVISAカードが奪われたら残ってるのは世界に出ると究極に役に立たないJCBカードのみ
VISAカードは僕の世界一周の旅の生命線だ
ダミー財布の中身のお金全てを盗まれたとは言え、クレジットカードとメイン財布を守れたのは大きい
だけどやっぱり持ち金を盗まれたショックもでかい
一体いつ僕は財布をスラれたのか?
僕が最後に自分の財布があるのを確認したのはバスを降りるほんの15分前
つまりそこからバスを降りるまでの15分でスラれた事になる
犯人はバスの中で唯一の外国人旅行者の僕にずっと目をつけて居たのだろう
ただ僕が乗ってきたバスは到着までもともと丸2日はかかるバス
途中で盗むとバスの乗客の中の誰かになるし、警察沙汰になれば運転手が全員の荷物を確認するだろう
だから最後にバスを降りる瞬間を狙ってたのだ
前回の記事を最後まで読んだ人ならご存知の通り、僕はバスがリオの街中に差し掛かった時に道路に止めてあるパレード用の車に夢中になり写真を撮っていた
その時僕は左の窓側を見て写真を撮ってたのだがその際逆の右側の通路はノーマクだった
ダミー財布は右のポケット
摩擦が起こらないようにそっと取れば盗むのは簡単だっただろう
空っぽのダミー財布本体は戻ってきたし、カードも盗まれてないので旅がここで終わる事はない
でもやはり盗難に会った為に心は落ち着かない
多分僕の財布を盗んだ犯人は早めにバスを降りたはず
僕が財布がないのに気づいてバスの中に探しに戻ってた最中に犯人は荷物をピックアップして消えてただろう
一人バスを降りた地点に取り残されてこれから何をしなければならないか考えた
とりあえずブラジルの通貨が手元にない
ATMを探さないと
そう思いフラフラと歩き出した
周辺の人に英語で「ATMはどこですか?」と聞くけど言葉が通じないからか、 アジア人の風貌でコロナウイルスが怖いからか反応は冷たい
本当に皆知らないのか言葉を発せずに首を横に振るだけ
たまにあっちだよっと適当に指を刺される
その言葉を信じてそっちの方に歩き出すけど ATMは見つからない
一人立ち尽くす僕の両側をカーニバルに来た人達が楽しそうに通り抜けていく
この街に、いやこの世にまるで僕なんか存在していないかのようだ
完全に空気
ひとりぼっちで誰も味方のいない強烈なアウェー
僕は人に聞くのは諦め一人で街を歩き出し ATM を探すことにした
そしてバスを降りてから30分後、ようやく自力でATMを見つける
これで宿まで移動する交通手段に乗れる
幸いネットがあるので近くの大通りにUberを呼んだ
しかしリオのカーニバルで街が混んでるからかなかなか Uber が到着しない
リオのカーニバルは数日にわたってカーニバルのパレードを競い合う祭典
そのためレベルに応じて第1部、第2部と言うようにレベル分けがされているのだ
今日はその第2部の最終日
第2部といっても日本では考えられないような壮大なレベルのパレードが行われており街はその熱気に包まれていて誰もがお祭り気分で盛り上がっている
そしてその周りのお祭り気分や喧騒がなおさらお金を盗まれたばかりで一人ぼっちで街をフラつく僕の孤独な心を容赦なく握り潰してくる
ひとりでUberを待つ為に道に立ってるだけでもツラい
なんで俺ここにいるんだろう?なんて弱気な事をつい考えてしまう
リオデジャネイロは危険な街
それはここに来るまで嫌と言うほどいろんな人から聞かされていた
スペインで牛追い祭りの時に出会った南アフリカ出身のブラジル在住の青年に「来年僕はブラジルのリオデジャネイロに行くよ」と言った
すると彼が「君は南アフリカのヨハネスブルグにも行ったんだよね?それならあの街の危険さを知ってると思うけどリオデジャネイロはヨハネスブルグと同じぐらい危険だよ」と忠告されていた
ブラジルのアマゾンツアーで知り合ったスイス人のマロウという男性も「リオデジャネイロはスーパーデンジャラスだ 気をつけろよ」と教えてくれていた
彼はスイス人だけど彼の奥さんはブラジル人だ
ブラジルの事をよく知っている知人から忠告を受けていたのに僕はバスの中でも寝まくったりして油断していた
これは完全に僕のミス
何てことはない
最近ここまで旅が順調だったからといって油断した自分が悪いんじゃないか
それをこの街のせいにしてはいないか?と自問自答する
そして全ては自分の行動の責任だと自分で認めた瞬間にまたフツフツと攻めた旅をしていた頃の気持ちを思い出してきた
俺はまだ終わってない 俺の旅はまだ終わらない
またひとつ勉強したと思ってこれから先に活かせばいいだけのこと
そう思うとさっきまでの不安さやアウェー感が嘘のように消えた
そもそも今更何がアウェー感だ
ここまで約2年ずっと一人でこうやって旅してきたんじゃないか
アウェーなんて当たり前だったはず
それにある意味ダミー財布は見事に役目を果たしてくれた
僕のメイン財布は守られたのだ
僕は気を取り直してようやくやってきたUberの車に乗り込んだ
リオのカーニバルの最中はリオデジャネイロの街中の宿が埋まる
僕が予約できた宿はリオの街の中心から少し西に外れたサッカーの殿堂マラカナンスタジアムの近く
Uberの運転手に道を教えながらたどり着いたホステルは有刺鉄線が張り巡らされており大きな鉄の扉が閉められている そんな宿だった
マラカナンスタジアム の近くのRepública Maracanã Hostel Vila Isabelはこちら
República Maracanã Hostel Vila Isabel
- ロケーション:★★★☆☆
- スタッフ :★★★☆☆
- 価格 :★★★☆☆
- 清潔感 :★★☆☆☆
- WIFI :★★★☆☆
※あくまでも個人的な評価です
リオの街の中心からは離れているサッカーマラカナンスタジアムの近くのホステル
夜、周辺は出歩く人が少なく決して治安がいいとは言えない
部屋の中やトイレも清潔とはとても言えないのでよっぽどマラカナンスタジアムの近くに泊まりたいか、僕のようにリオのカーニバなどで街の中心部のホテルが埋まっている時にぐらいしか泊まる理由がないホステル
でもスタッフは質問にはしっかり答えてくれる
とにかく60時間のバス移動の肉体的ダメージ、お金を盗まれた精神的ダメージのダブルパンチでもうフラフラだ
シャワーを浴びこの3日間の汗を流しベッドに倒れるように寝転がった
これからリオのパレードに向かうヨーロピアンがテンションが上がってこれでもかというほど騒いでいる
でもそんな声は関係なかった
大きな笑い声がこだまする安宿の汚いベッドで泥のように眠った