2019年7月8日
いよいよ僕の牛追い祭りデビュー当日
牛追い祭りは朝8時から始まるので7時過ぎには会場に行っておきたい
そのため起きるのは朝5時半などとかなり早くなる
同じ宿の欧米人達と一緒にバスに乗って早朝からパンプローナの町の中心にやって来た
昨日の夜雨が降ったようで路面が濡れている為、コンディションは最悪
こんな濡れて滑りそうな石畳の上を全力疾走なんかするとまずカーブでこけるんじゃないだろうか
今日の牛追い祭りに参加して走る人たちは通路の中に、走らずに見るだけの人は塀や柵の上に陣取ってる
走り始めのスタートポイントをどこにするかを考えてたんだけど、一緒に来たメンバー達と相談して僕とアメリカ人のジェイクは昨日僕が下見した市庁舎のあるPlaza consistorial(コンシストリアル広場)という広場からスタート
他のヨーロピアンは僕らよりもう少しゴールに近い地点からスタートする事になった
僕が前日に牛追い祭りのコースを下見した時の様子とその解説はこちらの記事
牛追い祭りのレースが始まる直前になるとコース上にお店を持ってる店主が自分の店に牛が突っ込んでこないように木の簡易的なドアで店の入り口を完全に塞ぎ始める
これをしておかないとお店の中はもうむちゃくちゃにされるだろう、と言うかマジで潰される
お店の扉には人も牛もぶつかるだろうから塞ぐだけではなく扉が吹っ飛ばされない様に鎖でぐるぐる巻きにしてる店もある
テレビ局のカメラマンもスタンばり、ギャラリー達もバルコニーに出てみんなそれぞれの準備は万端の様だ
Plaza consistorial(コンシストリアル広場)には沢山の走者が集まり緊張の面持ちでスタートを待っていた
ビルに設置されたパブリックビューには去年のものか前日のものなのか牛追い祭りで人が牛に吹っ飛ばされる映像が流されている
今から走る人に対してこんなの見せるとか牛追い祭りの主催者ってド S なの?
普通怖くなっちゃうでしょ(汗)
この広場は第1コーナーでもあるし広場に差し掛かった牛の大群から走者たちが逃げまとう場所でもあるからその様子を撮る為に組まれた足場にカメラマンが配置されている
あぁ いよいよ始まってしまうんだな・・・
いや、マジでちょっと緊張するわ
こればっかりは相手が人でなくて闘牛なんでヘタをしたら本当に殺されちゃうから
強盗とかだと最悪金目の物を渡せば命まで取られる事はないけど牛に話し合いや交渉は通じないんで本当に命を落とす可能性がある
そんな命がけのレースを自分自ら走ろうとしてるなんて俺もこいつらも皆んなある種バカだよな
でも男なら一度はこんな命がけのレースを走ってみたい
そして年をとってから「やっぱりあの時トライしとけばよかった」と後悔しないようにしておきたい
こんな風にユニフォームを揃えて参加している人達もいました
ね?
以前の記事でも書いたように必ずしも上下白の服を着てないと参加させてもらえないってわけじゃないんですよ
私服で走っても大丈夫です(ただし走りやすい格好で参加した方が安全)
こちらは高見の見物組の皆さん
どのぐらい前から予約すればここ取れるのかな?
俺ももう一度牛追い祭りの時期にパンプローナに来ることがあったら1日は走って1日は上から高見の見物かましてみたいわ
そして彼が一緒に走るアメリカ人のジェイク
同じAirbnbの宿でベッドが隣同士だったんだけど、僕が明日牛追い祭りを走るって言うと「俺も走るから明日一緒に行こうぜ」ってことになった
しばらくすると警察の一行がやってきて走者の持ち物検査が始まる
割としっかり一人一人ちゃんとボディチェックされるので、ここで変なものを持ち込んでたりコンデジとかでかいカメラ持ち込んでたらコースの外に出されて走らせてもらえません
でもGoProとスマホは問題ナシ
朝の8時が近づくとギャラリー達や走者達も少しずつざわつき始める
みんなもうすぐだって感じででワクワクとドキドキが一緒に来始めてる
とりあえず僕らが走り出すのはこの路地の方向だここをまっすぐ走るとすぐに牛追い祭りのコース上の第2コーナーに差し掛かる
それを曲がれば牛追い祭りのメインの直線
そしてそこを走りきればゴールの闘牛場だ
ジェイクも顔は笑っているが若干緊張しているのが分かる
僕「心配ないよ、ジェイク 今年はまだ誰も死んでないから」
ジェイク「当たり前だろ!まだ祭り始まって2日目だぞ もう死者が出てたら早過ぎるだろ(笑)」
ごもっともなツッコミ(笑)
気を使ってジェイクを和ませるつもりが逆に不安にさせてしまったみたいだ
お互いに拳と拳を合わせて「お互い楽しもうな でも絶対死ぬんじゃないぞ 絶対一緒にゴールしような」と話してた時に突然花火の爆音が鳴り響いた
そして観客と走者たちが一斉に声を上げる
ついに牛追い祭りが始まったのだ
つまりさっきの爆音の花火でもう牛たちは放たれている
今頃こちらに向かって坂道を駆け上がってきてるはずだ
もう気の速い奴やビビりまくってる奴はまだ牛も来てないのにもうすごい勢いで必死に闘牛場の方に向かって走り始めてる
え?これってもう走り始めた方がいいのか?
それともやはり牛が視野に入るまでここで待機して牛が見えると同時に猛ダッシュで走り始めるべきか
でも牛の速度を考えると視野に入ってから走り始めるのじゃ遅いのかな
どうしよう
僕「ジェイク!俺達どうする? もう走り始めた方が・・・え?」
ハイ、ジェイクもういない 消えてました(笑)
ジェイクまだ牛も来てないのに既に猛ダッシュで走って逃げたようで僕の視界から消えてました
おおい、マジか せめて何か一言声くらいかけてくれよ
俺はどうする?
周りの走者たちももう走り始めてるし何より後ろからギャラリー達の歓声がドンドン大きくなってくる
もう牛がすぐそこまで来てるようだ
牛のスピードを考えるともうそろそろ走り出さないとヘタをすると第2コーナーで牛の大群と重なってコケたり壁に挟まれたりしたら病院行きだ
もう行こう!
意を決して僕もダッシュし始めた
そして後ろからの観客の悲鳴と牛のものすごい足音聞きながら猛ダッシュで第2コーナーに向かった
一瞬だけ後ろを見た時に数匹の牛が視野に入った
これまずいんじゃないか?
第2コーナーはほぼ直角に近い曲がり角だ
安全を考慮するならどうしてもスピードを落とす必要がある
選択肢は2つ
危険を承知でこのままスピードを落とさず第2コーナーを曲がってそのまま牛と一緒に走るか
もしくはスピードを落としてコーナーの内側に入って牛をやり過ごして牛の後ろから走るか
結果僕は後者を選択した
牛のスピードは予想以上だ
一度この第2コーナーで曲がり角の内側に入って牛の大群をかわそう
このまま牛の大群を背中に背負った状態でスピードに乗って第2コーナーに入るのはあまりにも危険だ
僕は第2コーナーの手前でスピードを落として曲がり角を曲がり、そして牛の大群をかわすためにすぐ内側の壁に張り付いた
その時僕の少し後ろを走っていたおじさんが僕とは正反対にスピードを落とさず第2コーナーに入ってきた
そしてその第2コーナーをスピードに乗ったまま曲がろうとするために少し外側に膨らんでそこで遅れた分、後ろから牛の大群に追いつかれ角で吹っ飛ばされた
吹っ飛ばされたおじさんが地面に叩きつけられたんだけどこの時ものすごい音がした
おじさんも相当なダメージだったと思うけど後ろからまだ複数の牛が走ってくるのでおじさんは顔をしかめながらすぐに立ち上がり僕と同じように壁際に移動して事なきを得た
その間にも後続の牛が何匹も通り過ぎて行った
牛に追撃されなくて良かったなおじさん
もう一撃くらってたらヤバかったと思うよ
このおじさんが吹っ飛ばされたシーンはなかなか衝撃的な場面だったので牛追い祭りが終わった後テレビ中継で見たら何度もこのシーンが映されていた
実は僕もこの時スマホの動画を撮ってたつもりだったんだけど、録画のボタンをタップした時にちゃんと押せてなかったようで撮影してるつもりのカメラが回ってなかったので目の前で見た壮絶なシーンを撮り逃していた
そのあと僕は牛の後を追いかけるようにメインの道を走り抜けた
牛達は先に走っていたグループと後ろからちょっと遅れてきたグループに分かれていたようで、さらにその時僕の後ろから牛の軍団がやって来て僕をあっという間に抜き去っていた
一応その時の動画も撮ったんだけど、後ろのグループの牛はイマイチスピードも遅くて全然迫力あるシーンが撮れなかったのでわざわざもうこのブログには掲載しないことにします
こうして僕の牛追い祭りのレース初日はあっという間に終わってしまった
ちょっと走りにしても動画にしても不完全燃焼だなこれでは
牛達が走り去った後のコースは徐々に平穏さを取り戻していた
走者達はお互いに「無事で良かったな クレイジーだったよな」みたいにお互いの無事をたたえ合っている
嵐が過ぎ去ったって感じだ
そのままゴールの闘牛場に行ってみたんだけど、牛達が全部入った後その闘牛場の入口は閉められるようだ
僕が歩きながらゆっくり闘牛場にの入り口に向かった時にはすでに扉が閉められており中に入れなくなっていた
おそらく僕よりだいぶ先に走って行ったジェイクは闘牛場の中に今いるだろう
そして完全に牛追い祭りが終わった後のコース上は普段の観光客でいっぱいの路地に戻った
所々でコースに設置されていた木の柵を撤去する作業が始まっている
また明日の朝までこの木の柵は外された状態になる
これを毎朝また組み立てて設置するのも大変な作業だなぁ
早速牛追い祭り2日目のレースを終えた走者たちにテレビ局がインタビューを行っている
またこちらの帽子をかぶって背中を向けてるおじさんは走ってる最中にこけて怪我をしたようだ
赤十字病院のスタッフの治療を受けている
一応僕が参加した2019年の牛追い祭りの走者で怪我をしたのは500人との発表になっている
でもこれはあくまで赤十字病院のスタッフの治療を受けた人の数で500人
怪我をしたけど治療を受けなかった人は倍以上いると思う
だから軽く1000人以上は何かしらの怪我を負ってるはず
牛追い祭りのレースが終わってしばらくすると闘牛場のチケット売り場にものすごい人のが行列を作っていた
並んでる人に何か聞いてみるとどうも今晩この闘牛場で闘牛ショーが行われるらしい
マジかせっかくスペインに来てるんだしちょっと見てみたいなぁ
ということで20分ぐらい並んで僕もチケットを購入しました
席によって値段が違うんだけど僕は今回2階席を28ユーロで購入
夕方6時半から7時ぐらいの間に開始予定
そして夕方の6時半前に闘牛場に戻って来た
座席が石で作った階段のような状態になってるのでみんなお尻に敷く硬めのスポンジでできたマットを購入している ひとつ1ユーロ
もちろん僕も一つ購入しました
座席が雨で濡れてる時とかにもいいですね
というのもね夕方前にちょっとしたスコールが降ってたんですよ
だから絶対に下が濡れてると思ったので買っておきました
ちなみにこれ返却すると1ユーロ戻ってきます
準備も整ったのでいよいよ会場に入ったんだけど闘牛ショーを行う舞台はびしょ濡れ
これ本当に開催できるのか?ってくらい濡れている
闘牛場のスタッフ達が必死で水かきをして水を端っこに持って行ってなるべく中心に水たまりなどができないようにしているんだけどそれでも結構厳しそうだ
時折闘牛士が会場に出てきて土の上の水の具合や滑らないかどうかを確かめてスタッフたちと何か話している
そして闘牛開始予定の時間から40分ぐらいだったところで会場にアナウンスが流れた
その途端ものすごいブーイングが会場を包んだ
僕はスペイン語が分からないけどそのブーイングの意味は分かった
今日の闘牛ショーは中止になったのだ
まあこの雨ならしょうがないような
ヘタしたら死人が出るもん
でもスペイン人たちはお構いなしに容赦ない罵声とブーイングを浴びせている
日本だったらこの雨じゃ怪我人か死者がでるからしょうがないよね、やめるべきだよって観客たちもなるんだけどこの辺はさすがスペイン人と言うか・・(笑)
その後闘牛場の外のチケットブースでチケットの払い戻し
闘牛場の会場内にいた人が全員払い戻しに並ぶから払い戻しにのお金を受け取るまでに50分くらい並んだ
しょうがないから宿に戻るか
雨が上がったパンプローナの街を歩いて一軒のカフェに入ったんだけどそこに今日の牛追い祭りの様子が掲載された新聞が置いてあった
見事にそして綺麗に人が吹っ飛ばされている
僕は今日の走りには納得していない
そして撮った写真や動画にも納得がいってない
本当はこんな危険な祭り走るのは1回のつもりだった
でもどうしても納得がいかない
たとえ走ったとしてもこれでは後悔が残ってしまう
僕の心は決まっていた
明日もう一度走ってやる