2019年7月9日
僕にとっての牛追い祭り2日目の朝がやってきた
昨日の記事で書いた通り闘牛のショーが見えないほどの雨が前日に降った為、今朝も路面は濡れまくっていた
牛追い祭りは朝が早いので早朝からパンプローナ町の中心に行ってきたのだが夜通し酒を飲んで騒いでた連中も多く相変わらず街のその辺で人が寝てる
昨日僕が後ろになるよう走った時にスタートポイントに選んだ市庁舎前の広場は今日も朝からものすごい人だった
そして昨日の朝に見た光景と同じように牛追い祭りのレースのコース上にお店を出しているところは木で作った即席の扉で牛が入ってこないように自分の店を守っている
僕は昨日の反省点を活かして今日は何としても牛と走るために第2コーナーを曲がった地点からスタートすることにした
ここが第2コーナー
ここは牛や人がよく転んでハプニングが起きやすい場所なので、ここでも足場が組まれてテレビ局のカメラマンがスタンバイしている
足場の上に立ってるカメラを持った人がテレビ局のクルー
写真手前の赤いベストを着てる連中がカメラマンだ
この人たちからしたらハプニングが起こってくれた方がいい絵が撮れるからありがたいんだろうな
走る俺たちからしたらとんでもない話だ
また第2コーナーを曲がった後のメインの直線の上空にはワイヤーが通してあり、そこにスタビライザー付きのカメラが設置されている
牛の大群と走者の動きに合わせて動くようになってるので、走ってくる牛達とそれに吹っ飛ばされる人たちを逃さず撮影できるようになっている
テレビで牛追い祭りが中継されてる時もほとんどがこのカメラからの映像だ
そして毎日いる高見の見物組みもスタンバイ済み
昨日同様に警察がやってきて走者の持ち物検査を行う
これが終わったら後は祭りの始まりを待つだけ
牛追い祭りのレースは朝8時から始まるがだいたい走者たちが心なしかソワソワしだすのがレースまで残り5分を切ってからだ
不安をかき消すかのように体を動かし始めたり、屈伸運動をしたり、足首を回し始めたり、その場で軽いステップを踏むようなジャンプを繰り返したりとさながらスタートを待つマラソン選手のような動きを見せ始める
僕も今日の自分のスタートポイントに決めたメイン通りのエスタフェタ通りに移動した
レース開始まではあと3分を切った
今日は俺は無事に走りきれて無事に帰れるんだろうか
直前になるとこんな思いが頭をめぐる
さっき「お互い頑張ろうな!」と僕に握手を求めてきたおじさんが隣で胸の前で十字を切って目をつぶりガチで祈り始めてる
おじさん、そんなガチで祈られたらこっちも不安になってくるって(笑)
時刻は7:59 祭りの始まりまで1分を切った
この細くて長いエスタフェタ通りに集まった走者とバルコニーから眺めてるギャラリー達
大量の人で溢れかえるこの直線で今日はバッチリ走ってみせるぞ
そして昨日同様、打ち上げ花火の爆音が鳴り響きしばらく待機してるとコーナーの向こうから地響きの様なものすごい音が聞こえ始めた
観客の女性の悲鳴が響き渡る
そして後ろから走って来る人達の何か分からない大声や叫び声が聞こえる
エスタフェタ通りに待機してた走者が一斉に走り始める
僕は牛が目に見えるギリギリまで待つつもり
まだだ まだ我慢しろ
牛が目の前走ってから僕も走り出すんだ
そしてついに牛の大群が視界に入った
今だ!!
ここからは動画でご覧ください
動画の途中で気絶して倒れて動かなくなってる人がいるのわかりましたか?
この日の牛追い祭りは昨日に比べて参加者も多く地獄のようなランだった
もうその辺で人と人とがぶつかり合ってコケまくり、そのコケた人に更に人が躓いて人が大量に倒れそこに牛が走って来るという地獄絵図
そして参加者みんなが命がけの為、他人を気遣う余裕がなく必死で自分だけがなんとか安全なポジションでより速く走ろうと思ってるので隣同士の走者と押し合いなども始まってその辺で揉め事が起こっている
いやいや、後からも牛が走ってきてるんだから今モメてる場合じゃないだろ
そしてもう一つの問題はゴールの闘牛場のゲートだ
昨日の経験からあそこは牛が全部闘牛場に入った後に閉められるのでゴールするのが遅すぎると閉め出しをくらってしまう
なんとしても今日はちゃんとゴールしてあの闘牛場に入りたい
そのためにも目の前を走る牛達から離れるわけにはいかなかったのでなるべく走れる限りは早く走ろうとする
でも牛のスピードは相当なものであっという間に牛たちは見えなくなってしまう
そしてこのメインの直線もダッシュをしていると思った以上に長い
ただ牛は前のグループと後ろのグループに分かれている
僕は今ちょうど前のグループと後ろのグループの間を走っているので、このポジションを守りながら走ってる限り後ろの牛のグループより先に闘牛場に入る事になるため絶対にと闘牛場のゲートは開いてるはずだ
前の牛から離され過ぎず、そして後ろの牛の大群に追いつかれないようにキツイけどペースを落とさず闘牛場まで走るしかない
そしてついに
闘牛場のゲートが閉まる前に闘牛場の中に入ったぞ
俺はやったんだ
あの牛追い祭りを走り切って闘牛場の中にゴールしたんだ
後続の牛の大群も闘牛場中に入ってきてそのまま牛が入る厩舎に戻っていった
恐怖のレースを走り終えた走者たちが皆音楽に合わせて嬉しそうに踊って自分のやり遂げたこと、そして自分達の無事を喜び歓喜している
ただこの時闘牛場のスタッフたちがこの闘牛場のメインゲートだけでなく全ての出入り口の扉を完全に閉めてるのが気になった
僕らはまだここで喜びの宴をあげてるし、その後ここから出て行くのにどうして全ての出入り口を封鎖するんだろうとチラっと疑問がよぎった
しかし周りの欧米人からはハグをされたり握手を求められるし僕も走りきった喜びに身を任せてすぐに他の欧米人たちと同じように闘牛場の中ではしゃぎ始めた
この時僕はまだ気づいてなかった
牛追い祭りがまだ終わってないことを
そしてこの後にまだ地獄が待っていることを