2020年3月4日
いつもと同じTKG(卵かけご飯)から始まる朝を迎え、民宿小林に泊まってる僕らはこの日イグアス移住区にある移住資料館という建物前に来ていた
本来は朝の9時にはここに着くはずだったが民宿小林で働いてる現地人の車を出してくれるドライバーが遅れた為に到着が10時前になってしまった
ここが連れて来てもらったイグアス移住区の移住資料館の建物
今日はこの資料館の中で園田サンという子供の頃にパラグアイに移り住んで来た方のお話を聞かせてもらう事になっている
まず僕らを迎えてくれたのはラパチョという木の大木
ラパチョとはパラグアイの象徴のような木で綺麗なピンク色の花を咲かせる木だ
満開のラパチョはさながら日本の桜のような彩を見せる
いきなりここでこの木を見れるとは思ってなかった
ただ今は中で園田サンを待たせているはずなので一旦中に入ろう
中はこんな感じ
園田サンは見た目おそらく60代ぐらいの男性だ
園田サンはこのイグアス移住区の中でも比較的力を持ってる方で、移住区の中に「ペンション園田」という宿も経営されてる
だいたい日本人旅行者がパラグアイのイグアス移住区に宿泊する場合、このペンション園田か僕らが泊まってる民宿小林に泊まるのが定番だ
多くの写真が貼ってある壁の前に椅子を並べてそこで園田サンのお話を聞く
・・・のだが、まず話が始まる前に園田さんが言った
「今日私はここで1時間前から待ってるんだけど、この中で今日寝坊した人は誰?」
園田サンちょっとだけ怒ってる
どうも今日僕らが遅れてきたのが現地人のドライバーのせいだと知らないようだ
僕らの中の誰かが寝坊してたために出発が遅れたと思われてるみたい
多分宿のお母さんが資料館に行くのが遅れるということは伝えたけど、どういう理由で遅れたのかを伝えてなかったんだろう
一応僕らの方で誰も寝坊はしていなくてドライバーが来てなかったため1時間遅れたことを説明したのだけど、園田のオジサンは少しばかり不満そうだった
今考えると僕らに責任が無かったとはいえ、結果待たせたからには僕らからも何か一言言うべきだったとは思う
それが何もなくニコニコして普通に椅子に座ってたから園田サンも口火を切ったのだろう
最初の印象だけで言うとちょっと気難しそうなオジサンに見えてしまう
でも実際ここで僕らにいろいろ説明するために1時間待ってくれていたことは事実だもんな
しょうがないよね
一旦僕らはみんなで椅子に座って園田サンのいろんな説明を聞かせてもらう
パラグアイって小さな国に見えるけど実は日本よりも少し大きいそうだ
パラグアイは日本の国土の1.1倍の広さ わずかながらパラグアイの方が少しだけ大きいみたいだ
資料館の中には昔森しか広がってなかったこのイグアス移住区をクワやノコギリなどで開拓して行った時の古い道具が並べられている
今あるような道具ではなく昔このような道具で森を切り開いて人が住める町を作るのは気の長いとんでもない労力を必要とする作業だっただろう
皇太子もここを訪れてたみたいだ
ある程度話が進んだところで園田さんが言った
「今、日本はどんどん少子化で人口が減っている。日本の人口が今どれぐらいのペースで減ってるか知っている?」
少子化なのは知ってるけど、どのくらいでと言われたら誰も答えられない
毎年和歌山県の人口が丸ごと消えているのと同じスピードで人口が減ってるんだよっと園田サンは教えてくれた
「だから皆が今やらないといけないことは頑張って子供をどんどん作ることだ。この発言をセクハラと取るならそれで結構」と言った
実は僕はパラグアイに入る以前からこの園田さんの噂は聞いていた
中米を旅してる時にメキシコで出会った女性に園田サンのことを色々聞いていた
あの人はセクハラまがいの発言や言動をする人だとか話が長すぎるとか
2人の女性からそういう話を聞いたことはあった
でも僕がそういう話を聞いた後にペンション園田に泊まりに行った知り合いの女性バックパッカーは「全然そんなことなかったよ」とも言っていた
僕もそれを聞いてどれが本当のところなんだろうと思っていた
「頑張って子供をどんどん作るべきだ」
別に間違ってないとは思う
この発言はセクハラなんだろうか?
今ってこんな発言もセクハラとして扱われてしまうのかな?
ハラスメントって元々権力を行使して無理やり言うことを聞かせることを示す言葉なので、正確に言うと園田サンは僕たちに対して何の強制力も持たないのでそういう発言をしたからといってこれがセクシャルハラスメントには当たらないと思う
でもはっきり物事を言う園田サンの性格が他人から誤解を受けることはあるかもしれない
あなたは子供いるの?なぜ子供作らないの? とか聞かれると女性の方からしたら大きなお世話に思えたり、何か事情があって子供を作りたくても作れない人もいるかもしれないので確かにセンシティブなところをエグってしまう可能性もある発言だ
南米を旅する女性の間で園田サンの言動はセクハラだと噂になっている
きっとそのことも園田サンの耳には何回も入って知ってるだろう
でもだからといって園田サンは態度を変えたり意見を変えたり八方美人に変わったりはしていない
ブレてないのだ
正しいと思うことは自分が嫌われ役になってでも言ってくれてる大人の人だと思う
考え方や言動がもしかしたら古いと思われるかもしれない
最近では怒らないことがいい人とか、怒らない人がスマートな文化人というおかしな風潮が出てきてると思う
僕はなんとなく温厚なふりをしていい顔ばかりしている八方美人は嫌いだ
怒るべき時にしっかりと相手に怒ってやれるのが本当の大人だと思っている
若い人たちにそれがなかなか伝わらないのは承知している
でも園田サンもそれを承知で正しいと思うことを伝えてくれてると僕は思う
この人が園田サン
確かに話は長い(笑)
でもそれもいろんなことを細かく説明してくれようとする園田さんの姿勢からだろう
僕らはこの後宿のお母さんとスーパーの前で待ち合わせをしてたので、話を途中で切り上げて戻らなければならなかったけど、男性はみんな面白い話が聞けたと言っていた
自分に厳しい人は他人にも厳しい
逆に自分に甘い人は他人のいい加減な所にもうといので他人にも甘い
そう考えると最初に「寝坊したのは誰だ?」と僕らに聞いてきたのも頷ける
確かにあそこで1時間待たせて何も言わなかったのは僕も配慮に欠けてた
日本で会社員をしてた時の自分なら自分の責任じゃくてもまずはお詫びを入れてたはず
それが自由な世界一周という旅を長く続けてるうちに自分の中からそういう感覚が少しずつ抜け出てしまってたんじゃないか?
僕らが寝坊したと勘違いしていたとはいえ、きっといい加減な事が許せなかったんだろう
この人は自分に厳しく生きている分、他の人にも自然と厳しい目で見てしまっているだけじゃないかな
場合によっては敵を作ってしまうかもしれないし、親にもあまり怒られたことのないような若い世代の人には敬遠されるかもしれないけど僕は別にそれが悪い事とは思わない
それどころかこれだけ頑固なまでの昔の日本人の魂を持った人がこんなパラグアイの田舎町で今も自分に厳しく生きてるなんてなんかいいなと思ってしまった
園田サン、短い時間でしたが貴重なお話ありがとうございました!
宿のお母さんとスーパーの前で合流して買い物を済ませる
小腹が減ったので巻き寿司の小さなお弁当を買った
そしてそれを食べつつ、 みんなで昨日の水炊きの出汁を使って雑炊を作る
オクラとしいたけと海苔も登場
上手い雑炊を食ったらまた今日も夕方の散歩タイム
人は皆他人に好かれたい
そのため時にはいい人のふりをする事だってある
僕だって出来れば人から好かれていたい
でもだからといってそのために自分を変えたりしてはいないだろうか
人から嫌われるのを恐れて言うべきことを言わないような大人になってしまってはいないだろうか
このパラグアイの田舎に住む頑なな園田サンを見て僕もそう自問自答してみた
本当に思ってること、正しいことを言った上で人に嫌われるのならそれはそれでしょうがないじゃないか
それが嫌だからといって自分の思ってることもハッキリ言えない方が大人としてどうなのかなと思う
僕も古いタイプの人間なので若い人からしたら時にウザかったり、面倒臭かったり、頑固者と思われたりすることもあっただろう
それでもやっぱり本音でハッキリものを言う自分でいたい
ウザい、面倒臭い、頑固者 俺もそれで結構
それが自分ってやつだから