2020年1月28日
おはようございます
「ヘーイ、そろそろ行くよ 起きて」
まだ夜明け前に肩を揺すられ目を覚ました
昨晩同じ船旅をしてるアメリカ出身でイングランド在住のビニーから「もし良かったら明日の朝サップに乗って海から朝日を見に行かないか?」と誘われていた
サップとはスタンドアップパドルボードの事
スタンドアップパドルボードは略してSUP(サップ)と呼ばれる事が多い
アフリカのセーシェルの海やスイスの湖でも乗って見たいと思っていたスタンドアップパドルボードに乗れるならと快く了解した
思った以上に寒かったのでビニーはウィンドブレーカー、僕はパーカーを着てフード頭から被りスタンドアップパドルボートを持ってまだ暗くて静かに海に出た
夜明け前のカリブの海は本当に不気味なぐらい静かだった
海に出てしまえば遠くにうっすら無人島の影が見えるだけでもう僕ら以外何もない水平線
ビニーのお陰で朝から最高の朝焼けを見ることができた
ビニーがウィンドブレーカーのポケットから大きなゴミ袋を取り出す
「島にはよくビンや空き缶が流れ着くからね」
そう言って彼は島の浜辺に流れ着いているビンや空き缶やプラスチックのゴミを拾い始めた
若いのにちゃんとしたやつだ
僕も手伝わせてくれと言って朝まで一緒にビーチのゴミ拾いをした
そこからは船が出る時間までハンモックに揺られて休憩
今僕らのボートは別の島にガソリンを補給しに行ってるらしい
ボートが戻って来るまで自由時間だ
今日も少し曇り空だけど昨日に比べると全然マシ
雲の間から時々晴れ間が見える
1時間ほどハンモックの上でうたた寝をしているとボートが戻ってくる音が聞こえた
さあ今日もコロンビアとの国境に向けて地獄の船旅と行きますか
今日は一体何時間くらいこの船に乗るんだろうか
船はいくつもの無人島やボロボロの廃れた漁村の横を通り抜け南東へと進んでいく
あんな誰も知らない漁村に体ひとつで放り込まれてみたい
あんな無人島に2泊3日ぐらいで泊まってみたい
そう思わずにはいられない景色の連続だった
サンブラス諸島の地元民が本当に木を掘って作ったボートに乗って海に出て漁業をしている
何十年も何百年も前からやってきた漁業と今も変わらないやり方で魚を取って暮らしている
ホントすごいよなぁ
目の前で木の船であんなアナログなやり方で魚を取っているのを見ると文明って本当に必要なものなのかなと疑問に思ってしまう時がある
ボートに乗っているみんなの手持ちの水が減ってきてた
そこで水を買いに行くのとトイレ休憩を兼ねて一つの漁村に立ち寄ることになった
それがこの村
もしこれが夜にたどり着いていたら「ここは彼岸島か?」ってレベルのボロさと寂れ方
スペインの国旗のような赤と黄色の旗が掲げてあるのを指差して船のスタッフがあれはKUNAのマークだよと言った
KUNAとはクナと読んだりグナと呼ばれたりするサンブラス諸島に住んでいる先住民のクナ族のインディアンのことだ
サンブラス諸島にいくつも浮かぶ主要な島に約5万人のクナ族が住んでいて、島の中で選ばれたリーダーによってコミュニティが形成されている
クナ族はクナ語を話すが最近ではスペイン語を話す人も増えてきてるらしい
漁村の小さな子供が一人で船を出して魚釣りに来ていた
途上国では小さな子供が親と一緒ぐらいしっかり働いて家計を助けている光景を何度も見てきたがやっぱりこういう場所でもそれは変わらない
この辺では中学生ぐらいの歳の子供がもう立派な家計の戦力だ
そして最初見た時に驚いたのがこれ
これ何かわかります?
最初ね、この小屋の下から海にジョボジョボと水が流れてるように見えたのでこの村の人のシャワー室かと思いました
でもこれ実はシャワー室ではなくてトイレ
木とトタン屋根だけで囲われたスペースからトイレをすると排泄物はダイレクトに海の中
じゃあさっき見た海にジョボジョボと流れ落ちてたのは誰かが小便をしていたのか
せっかく島に立ち寄ったのでちょっとこのトイレを見せてもらうことにした
一応便座はあるけどもう下の海が見えている
近くでは泳いでる子供もいるので衛生的な面で言うとどうかわからないが、これがここではずっと普通のトイレなんだろう
こんなトイレが今も残ってること自体が先進国で暮らしている僕たちからすれば貴重なものだけどそれって僕らの勝手な価値観だよね
思えば日本だって海に囲まれてる国なので大昔の漁村ってこんな感じだったのかもしれないな
この子達はまだ小さくて一人で漁に出れないからか桟橋のような場所から手釣りをしていた
みんながトイレを済ませてる間に僕は村を少しばかり見て歩く
子供ばかりが目に入るが大人たちはどこだろう?
迷子にならないように道を覚えながら細かな路地を奥へと入っていった
細い木を何本も立てて縛っただけの隙間だらけの壁
昭和初期の下町の民家かのようなトタン屋根
本当にこれと手作りって感じの家が並んでいてその辺で洗濯物が干されている
また時折村の中で真っ白な肌をした色素を持たないアルビノの人を見かける
ここはクナ族の漁村
何も知らずに訪れたら怖いくらい未知の世界
おそらく世界の人のほとんどが訪れたことがないような場所
貴重な場所に足を踏み入れてるな俺
クナの民族の漁村を少し見せてもらい僕らのボートはまた次の休憩する島に向かって出発
興味深い場所だったなぁ
船は変わらないカリブ海と無人島を高波の中スピードを上げて進んでいく
船主の話だと今日は結構な距離を進むようだ
そのため船のスピードを上げるんだけど波とボートのスピードでボートが跳ねる跳ねる(笑)
すでに僕らのボートは遊園地のウォータースライダーとフリーフォールを足して2で割らないような乗り物になっている
僕の隣に座っていたニュージーランド人のサーフボードが何回も海に落ちそうになる
これ長く続くとマジで船酔いを起こすぞ
通り行くサンブラス諸島のほぼ全ての島にヤシの木が生い茂っている
このヤシの木はクナ族の人の貴重な収入源らしい
ここでとれたココナッツを外界に売ってるんだろうな
サンブラス諸島で暮らす人の主食は魚とココナッツ
1日目以上に飛び跳ねる地獄のスピードボートにみんなグロッキーになってきた頃に休憩で立ち寄ることになった島が見えて来た
藁葺きの家が3軒ほどあるだけの本当に小さな島
iPhone で動画を撮りながら拡大してみると島に子供と犬が走ってるのが見えた
人が数人しか住んでいない小さくて美しい島だ
なんだここ なんだこの天国感
一体今どこにいるんだろうと思ってグーグルマップのGPSで確認してみた
どうも今僕らはPlayon Chico(プラヨン・チコ)という場所から海側に2〜3キロ離れた島にいるらしい
この島自体は小さすぎてグーグルマップにも載ってないです
この小さな島で暮らす島民がここでも手彫りの木のボートで漁に出ようとしていた
ここも歩いて5分で一周できてしまうほどの小さな島だ
むかし子供の頃にテレビで「家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ 」という無人島に漂流して暮らす家族のストーリーのテレビアニメの再放送を見たことがある
あのアニメの中に出てくる南国の島の世界がここにはそのままにあった
間違いない ここは地獄の旅路の果てにたどり着いた天国だ
この子めっちゃピュアで人懐っこい
この島にはまだ小さな赤ちゃんもいた
お母さんの仕事中この子達が面倒見てるんだろうな
偉いよねホント
僕もこれに乗って漁に一緒に出てみたい
まあ足手まといにしかならないだろうけど(笑)
でも少し慣れたら木のボートに乗って一人で魚釣りもできるだろう
彼は前回の記事でも紹介したアルメニア出身のドイツ人兄弟の弟のダリオ
アルメニア出身だけあってなかなかのイケメンです
アルメニアって世界一の美人大国って言われてるけど女性だけじゃなくて男性も顔が綺麗って言うかイケメン多いんだよね
もう最高だここ 正直暮らしたい
もちろんこれだけ何もない島で先進国で暮らしていた人間が暮らしていくっていうのは大変なことだろうと思う
こういう場所に訪れて自分達と違う文化があるからと言ってすぐに暮らしてみたいとか思うのは一時期の感情なのかもしれない
でもそれでもいいんじゃないかな
観光で訪れた人が景色や文化やそこに住む人を見てそう思うってことは間違いなくそこには素晴らしい何かがあるって事だろう
金に変えれない価値観だってあるんだ
そして人にはこのままで残したいと古い文化や古い暮らしを尊重する気持ちがある
今、日本でも田舎暮らしとかが流行って来てるのもそういう事なんじゃないかな
この子はホントよく僕の後を付いて来る 近くでいつも走り回ってる
懐かれてると段々と可愛くなってくるもの
ここは僕が世界一周で訪れた場所の中でもとびっきりの天国みたいな場所だ
世界から忘れ去られたカリブ海の小島
世界から取り残されたかのような場所
でもそんな場所だからこそ魅力的なんだ
ビニーがスマートフォンを船の中に置いてきたから代わりに写真を撮ってくれと言ってきた
ビニーもすっかり子供達と仲良くなって溶け込んでいる
2人を一気に肩車 自分で撮って言うのも何だけどいい写真だなぁ
ビニーはボクシングやってたから体も強い
おりゃ!もう一人追加で3人肩車!
僕らはこの後ずっと島の子供達と海で泳いで遊んだ
子供は元気で無邪気だ
この島と綺麗な海と太陽の光と南国の風
ピュアな子供達にもこのサンブラス諸島の雰囲気にももう僕はメロメロだ
途中見かけなかった女性が浜辺に出てきたので写真を一枚撮らせてもらった
この赤ちゃんこの女性の子供だったのか
遊び疲れて海の浅いところで座って足をプカプカ浮かべていると子供達はまだ遊び足りないようで僕の足の下を潜ってくぐりたがる
これだけ何もない島だと海が常にこの子達の遊び場なんだな
この島での約2時間の休憩が終わってボートに乗り込む時にビニーが「まるで天国みたいな島だぜ」と言った
そうだよねビニー
俺たちは今間違いなくこの地球の天国にいるよ
名残惜しさを胸にいよいよの天国のような南国の島とも別れの時が来た
きっともう2度と来れないような場所
でもまた来たいと思い続けていればいつか来れるかもね
もしもう一度ここに来ることができたらあの子達がどのように成長しているのか見てみたいな
先ほどの島を離れて1時間も進まないうちに少し遅めの昼食の休憩をとることになった
やって来たのはこの漁村
サンブラス諸島の全ての島が漁業を営んでいるので漁村だらけなのは当たり前なんだけどまあ本当に無人島と漁村が多いこと
そしてここにもまたKUNA(クナ族)の旗が
スペインの国旗のような色の旗の真ん中に卍のしるし
これがKUNA(クナ族)の象徴
ここもまたマイナーなクナ族の人たちのコミュニティだ
村の人たちはこの村に入ってくる僕たちを異様に珍しいものを見るかのような目で見てくる
でもまあそれもしょうがないか外国人なんてまずそんなに来ない場所だもんな
船の運転手に付いて行くと小さな食堂に案内された
出て来たのはもちろん魚料理
今日の朝の漁で取れた魚なのかすごく美味しい
島民の人は魚料理は毎日作ってるだろうからお手のもんだ
食堂から外を見ると若い子達がマラカスや笛や太鼓で音楽を奏で何かのダンスを踊っていた
こっちの独特の音楽とダンスなんだろう
ただ彼らがこれは遊びとしてやっているのか学校の授業が催しでやってるのかはわからない
食堂でご飯を食べていると村の子供たちが珍しそうに食堂の窓から顔を出して僕らを見てくる
向こうからすれば俺らは外界からやってきたエイリアンみたいなレベルで珍しいのかもな
興味津々なのにカメラを向けると顔を背ける恥ずかしがり屋さん
まぁKUNAの人達はあまり写真を取られるのを好まないのは何となく雰囲気から察することが出来る
昼飯を食べに立ち寄っただけだけど、いよいよクナ族の民族のエリアの中心に入ってきてるんだなと感じれる場所だった
そしてまたボートに乗り込み、遠慮なしにボートはジャンプを繰り返し僕らの腰とおしりにダメージを与えていく
そんな時また小さな綺麗な無人島が見えた
みんなでいい無人島だねと話しているとなんとボートがその島に寄ってくれた
今日は休憩と寄り道が多いな 楽しいからいいけど
ただ着いたのはいいけど本当に何もない人も住んでない無人島
なのでやることは自然に限られてくる
やることは海で泳ぐか木陰で昼寝するかの2択(笑)
この2択しかないんだけどこれでも普段日本で毎日サラリーマン生活をしてる人からすれば贅沢な2択だよね
島を一周ゆっくり歩いているとビニーが 遠くにある小さな島を眺めていた
ビニーが僕を見つけて言った
「なぁ あの小さな島まで泳げると思わないかい?」
確かに距離的にはそんなにない 多分1 kmも無いぐらいじゃないかな
僕「頑張れば行けそうだよね」
ビニー「君は水泳は出来る?もし泳げるなら今から一緒にあの島まで行ってみないか?」
まあ仮にあの島まで1 km として往復で2 km
連続で2キロ泳ぐのはきついけどあっちの島で休憩をしてからなら何とか行って戻ってくることはできるだろう
僕「サメに遭遇しなかったら多分行けるよ 泳いで行ってみる?」
ビニー「よし!行こう!」
そう言って僕とビニーが泳ぎ出そうとしていたところで船の運転手に止められてしまった
なんでもこの辺の島は無人島だからといって全ての島に立ち寄っていいわけではないらしい
人が上陸していい島とダメな島がはっきり分かれているようだ
あの無人島まで泳げなかったのは残念だけどこれはこの地域のルールだからしょうがない
あ、因みにカリブ海の沖で泳ごうとしてる人がいるとしたらカリブ海普通にサメいます
泳ぐなら本当に気をつけてください(笑)
そして進み続ける事2時間ちょっと ついに今日の目的地
今日僕らが宿泊をする漁村に到着した
ここには一応宿泊できるドミトリーと個室の宿泊設備があるらしい
もちろんここもKUNA(クナ族)の民族の漁村
この辺りは通常観光客が個人で来れない場所なので、ちゃんとした会社の船で行ってきた人達ですよという証明を渡される
これがないとこの島の中を自由に動き回ることは出来ない
港から島の中の村に入る時にチェックされるので無くさないように持っておかないと
村の中に入ってもこの島を出るまでは残しておいた方がいいな
村の中には小さな商店があると聞いたので早速少し村を歩きながら商店を探してみる
途中で見つけた看板
どうもここはウストゥポという島のようだ
グーグルマップで確認してみると確かにUstupo(ウストゥポ)という島にいる
今日はここで一晩か
つまり僕らは今日クナ族の村に泊まる訳だ
島で唯一見つけた文明の名残り
今はもう使われてないっぽいけど昔この島でも公衆電話が使われていたのか
なんか意外だな
見つけた商店で飲み物だけ買って村の中の自分の部屋に戻った
宿に戻ると半分外のようなキッチンの片隅のバケツにカニや貝やエビがいっぱい入っていた
さすが昔から変わらぬ漁村
これは今晩の晩飯が楽しみだ
船のスタッフもカニを持ち上げてご満悦
晩飯は何だろう?
ロブスターの蒸し焼きかな サザエのつぼ焼きかな
カニ飯なんて出てきたどうしよう ヨダレ止まらないんじゃないだろうか
出てきたのただの魚の飯・・(笑)
そりゃそうか ここまでそんな贅沢なかったもんな
部屋だってアメリカ人のカップルは個室に入ったけど僕らはドミトリーだからね
夜は晩飯を食べた後水のシャワーを浴びてベッドに潜る
明日も朝は早い
予定では明日中にコロンビアとの国境を越えて南米に入るはずだ
夜中寝ていると隣のニュージーランド人にベッドを蹴られた
どうも僕のイビキがうるさかったようだ
わざとじゃないけど気持ちは分かるよ 寝つきにくいよね
時計を見ると夜中の1時半だった
たしか外にハンモックがあったはず
パーカーを着込んで外にハンモックでも張って寝るかと思い一人で外に出てみると満天の星空
星が多すぎてあの目立つオリオン座さえ分かりづらいほどの星の数
夜のカリブの海は昼間の荒れようが嘘のように静まり返っていた
今日は僕がパナマで過ごす最後の夜
カリブ海に浮かぶサンブラス諸島の先住民の村で過ごせるなんて最高の夜だ
虫の鳴く声と波の音だけが聞こえる満天の星空の下ハンモックに揺られて眠った